最近、改めてこの本を読んでいます
PTSDや、発達障害などによる二次障害としてのトラウマの治癒など、ケーススタディをもとに理論化した本です
所で、この本がなぜ注目されているのか、フレームワークとして補足したいことがあります
■健康生成論としてのポリヴェーガル理論
元々認知心理学や、神経生理学などの側面から身体のストレス機序としての説明が主になっていますが、これまでの急性ストレス障害に対する治療に対し
心理的安全性
繋がり
といったものが、事故や社会との統合した感覚を回復させ、不活発な状態、硬直化した行動を改善させるケースがある
という点で有意義な臨床指針や多様化した治療法を導くという結論になっています。
まさしく、これが、サルートなという表現がぴったりで、日本語で言えば健康生成的なメカニズムを神経生理学的な側面から説明したという本です
■サルートとは何か?
この本のケースの中で、PTSDやトラウマ的な体験をした人が、自己防衛のために、戦うか逃げるかといった判断、いわゆる脅威にさらされた状況に追い込まれ、自己と社会との統合した感覚を失う、といった経験から
そこから心理的安全性や絆といった緩やかな人との信用基づく繋がりによって、その自己の統合された感覚を取り戻す
といった治癒といった表現を繰り返しされていますが、これこそがサルートな言われる、健康が作り出されるメカニズムの一表現になってる訳です
■サルートの反対は、パソジェニック
逆に疾病生成論というのが医療の元になっていまして、悪いところを取り除いたり、原因を特定し処置を施すことによって改善させるというアプローチになります
まさしく、これがストレス対処としては逃げるかたかうかという判断になる訳で、そのトレードオフとして、サルートな感覚が犠牲になっているので、
パソジェニックなアプローチだけでは改善しないのが、慢性的なストレスへの対処
ということになって、自閉症であるとか、トラウマへの対処には、ポリヴェーガルなアプローチが有効である
というこの本の結論に繋がってくる訳です
■無意識、を意識する?どうやって?
この統合された感覚が、神経生理学的なフィードバックループを作るかどうか、それが健康や幸福感を左右する訳ですが、メタ認知を必要とするので、結局リテラシーの問題になってきます
また、お勉強的な頭の良さという意味でのリテラシーではなくて、メタ認知や生活に根ざした、感覚としてのリテラシーの問題になってきます
いわゆる無意識領域と言われるところでは、社会と自己との統合した感覚こそが生きる力を生み出す
それこそが無意識の力そのものと言えるかもしれません
■私たちが無意識でやっていること
結局のところ、善性というのは、自分の生きる力にもなるし、他人の生きる力にもなる
コモンズ(共有材)として機能します。
自分と他者とのダイナミックなフィードバックループを社会システムとして自分の力に引き寄せる
この生きる上での力を育むのが、環境要因としての心理的安全性や人との緩やかな繋がりですので、
結局、外的資源の有無がサバイバルできるかどうか決まり、また、心身が脅威にされてされている度合いの強い、自閉症やトラウマを抱えた人達の必要な癒しにもつながるわけです
■サルートな感覚、レジリエンス、心理的資源の3つを理解するとは?
多くの心理学者や医療者がもっと注意を払わなければいけないと思うのは、現象論としてのレジリエンスからさらに発展させて
サルートな感覚を回復させるための資源としての心理的安全性やつながりといったものです。
さらに、 対処戦略の場においては、レジリエンスとして機能するため外的資源として、心理的安全性や緩やかな繋がりがあるといった健康生成的なコア概念を理解する必要があるということです
■よりシンプルに、ダイナミックに健康を考える
行動経済学の用語で、サルートな感覚を翻訳すると、以下にシンプルにすることも可能かもしれません
重要なキーワードは三つで
・トリガー
・ナッジ
・ポジティブフィードバック
この三点セットを、心理的安全性や緩やかな繋がりの中で、自分の人生に仕組み化していくか
ということです。
具体的には
トラウマを経験した人や、自閉症の二次障害などは、この仕組み化に、より多くのエネルギーやインテリジェンスを必要とするわけですので
対処の失敗を前提として、それをいかに埋め合わせるかという発想になっています
■まとめ
いわゆる無意識の力と言われているものは、学習性のサルートな感覚であり、この感覚が健康を生み出す力になります。
さらに
神経生理的なメカニズムからのアプローチに加え、いわゆる社会的な繋がりや、心理的安全性が、サルートな感覚によって、人は癒しや、生きる力の回復に繋がります。
■まとめ2
ポリヴェーガル理論は、いわゆるサバイバー研究から生まれた、とても有効な説明理論です。
特に心理的安全性や人との繋がりといった社会的な側面について、神経生理学的なアプローチから説明している研究者や臨床家にとってのとても有意義な本になっています。
そして、この面白さというのが健康生成論的であるという点に焦点を当てて、読み解いていくとさらにこの分野が、より健康や人生の回復に有効な指針を与えてくれるのではないかと思われます